売れない物件には必ず理由がある。


勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議
の負けなし、という言葉があります。

野球の野村監督がよく使う言葉ですが、
もとは、松浦静山の剣術書『剣談』から
の引用でその意味は、

「負けるときには、何の理由もなく負け
るわけではなく、その試合中に何か負け
る要素がある。勝ったときでも、何か負
けに繋がる要素があった場合がある」と
いう意味。

試合に勝つためには、負ける要素が何だ
ったか、どうしたらその要素を消せるか
を考えて行く必要がある。

また、もし勝ち試合であっても、その中
には負けに繋がることを犯している可能
性があり、その場合はたとえ試合に勝っ
たからと言って、その犯したことを看過
してはならない。ということ。

これは野球だけでなく私たちのビジネス
にも言えること。いつも心に留めておか
なければならないことです。

以前もこんなことがありました。

ある建売業者さんが3階建の建売住宅を
販売したときのことです。

それまでは2階建てを主に販売していた
建売業者さんだったのですが、たまたま
入手した土地が3階建の建つ土地だった
ため、分割して2棟の3階建を建てまし
た。

最初は、少し不安だったのですが建てて
みると、ほんの1ヶ月で2棟とも完売。

苦戦するかもしれないと思っていただけ
に大興奮。これからは3階建だ!とすぐ
に他の土地も購入したのです。

そして、意気揚々と新しい物件を建てた
のですが1ヶ月経っても3ヶ月経っても
売れません。

最終的に売れたのは大幅値引きをした8
ヶ月後。大赤字の現場となってしまいま
した。

同じ3階建てにも関わらず、速攻で売れ
た物件と大赤字になった物件。売主にと
っては同じ仕様の同じ建物です。

理由は、意外なところにありました。

最初の物件は、競合の多いエリアに建て
られた物件でした。同じような3階建が
多く販売されていたエリアだったため、
当初は売れ行きを心配していたほどで
す。

それに対して、大赤字になった物件には
競合となるような物件はありませんでし
た。ここ1年ほどは新築の売り物件はほ
とんどなかったエリアです。だから売れ
ると踏んだのです。

しかし、これが命運を分けました。

競合が多いエリアの物件は、他社の物件
が何度も売り出されていたため、お客様
の掘り起こしができていました。

仲介業者自体がそれなりの見込み客を持
っていたのです。

ただ、それまでに売り出されていた物件
では条件が合わず決まらなかっただけ。

そこに新規物件が現れたため、タイミン
グ良く決まったのです。

一方、大赤字になった物件の方は、お客
様の掘り起こしができていません。1年
近く広告が入らなかったエリアですから
当然といえば当然。

仲介業者が見込み客を抱えていないわけ
ですから、最初の物件のようにはいきま
せん。

それがわかっていれば、やるべきことが
変わります。

仲介業者が新鮮なお客様(見込み客)を
持っていないときには、広告宣伝をして
お客様の掘り起こしをすることが必要で
す。

そうやって、見込み客を発掘して、説得
(教育)して成約に結びつけるのが王道
です。

それをしないと、この業者さんのように
見込み客はいつまで経っても生まれませ
ん。売れない期間の伸びていくだけで
す。

注意しなければいけないことは、
仲介業者が新鮮な見込み客を持っている
エリアかどうか、頻繁に売り物件があり
広告宣伝されているエリアかどうか、を
見極めることです。

そんなエリアで新規物件を提供する場合
は、広告宣伝しなくてもすぐに売れる可
能性はあります。

しかし、そうでないエリアでは、広告宣
伝して見込み客を掘り起こす作業が必要
になるということ。

それを間違えると、本来売れる物件でも
なかなか売れません。

ご注意ください。