ある男の苦境の脱し方。


以前、弊社で働いていた従業員の話。

ある物件で契約の申し込みをいただきま
した。独身の男性だったのですが、はじ
めての不動産購入で少しナーバスになっ
ていたのでしょう。契約の前日になって
キャンセルの連絡が入りました。

時間は夜の7時。
すでに明日の契約のセッティングは終わ
っています。正直、今さら明日の契約は
キャンセルになりましたとは言えない状
況です。なんとか、再説得したいのです
が、買主もそんな状況を察してか、断り
の電話を入れたきり、こちらの電話には
出ません。

まあ、無理やり契約に持っていった場合
このようなことはよくある話なのですが
今回は少し事情が違います。

もともとはお客様からの相談ではじまっ
た話。資金的にも余裕があり、諸条件も
ピッタリの物件です。

あれだけ購入できることを喜んでいたの
に前日にドタキャンはこちらも納得いき
ません。

担当者と断りの原因を色々考えていたの
ですが、結局、マタニティーブルーと同
じ状況ではないかという結論になりまし
た。

そこでどうしたか。
もう一度再度説得に行くことにしまし
た。もちろん、買主とは連絡が取れませ
んから直接訪問。

自宅の前で待機すること2時間。
ようやく自宅に電気が灯りました。

この担当者が偉いのはここからのモチベ
ーションです。もう一度説得してきます
という態度ではなく、

お客様が涙を流しながら買わせてくださ
いと言ってもらえるように説得してきま
す、と言って出かけたことです。

普通の営業マンなら、ドタキャンで焦っ
てしまい、お客様を罵ったり、お客様の
非を責めるような態度に出がちですが、
彼はお客様を責めるようなことはしませ
んでした。

あくまで不安にさせた自分が悪いという
態度。物件の魅力を十分に伝えられなか
った自分が悪いという態度で接したこと
です。

これにはお客様もビックリ。
当然、罵声を浴びせられるのだろうと思
っていたのに正反対の態度で来られると
人間、拍子抜けするものです。

いつの間にか心を開き、再度、彼の話に
耳を傾けていました。

それから2時間。気がつけば満面の笑顔
で翌日の契約を行うことに同意していま
した。

涙を流しながら・・・というところまで
は行きませんでしたが、精神的にはそれ
に近い状態です。

ポイントは、再説得のレベルを上げたこ
とです。ただ単に再度説得するという態
度ではうまくいかなかったでしょう。

涙を流しながら・・・というのがポイン
ト。苦しい状況にもかかわらず高いレベ
ルでの説得を試みたからこそ、違ったア
プローチを取ることができたのです。

契約が取れないときや、苦境に陥ること
はよくあります。そんなときは、ただ単
に苦境を脱しようとしてもうまくいきま
せん。

そんなときは、もう一段上に目標を設定
しましょう。そうして負荷を与えること
でいいアイデアが浮かぶもの。苦境を簡
単に脱出できるアイデアが浮かぶもので
す。お試しください。