ものづくりをしている人が陥る罠のひとつに
「いいものをつくれば売れる」という罠があ
ります。
その大前提は、お客様は「いいもの」を求め
ている、という認識ですが、果たしてその通
りでしょうか?
それを考えさせられるのが、シャープの太陽
光パネルの例です。
太陽光パネルでは、シャープは5000件の特許
を保有していますが、わずか10年でそのシェ
アは90%以上から3%強まで低下しました。
太陽光パネルの良し悪しを判断するのは変換
効率ですが、シャープは変換効率20%ととい
う素晴らしい技術を持っています。
それにもかかわらず、シェアは増えていませ
ん。むしろ、極端に減っています。
その原因は、最新型である変換効率20%の太
陽光パネルを消費者が求めていないから。
本当は、求めているのかもしれませんが、変
換効率20%の太陽光パネルより変換効率15%
の太陽光パネルを選んでいる消費者が多いか
らです。
では、なぜ消費者は変換効率20%の太陽光
パネルを選ばないのか?
理由は、価格です。
変換効率15%の太陽光パネルと、20%太陽光
パネルとも単価が同じであれば、高性能な後
者が売れるのは当然ですが、仮に前者の価格
が後者の半額だったらどうでしょうか。
同じ予算なら変換効率15%の太陽光パネルの
方がより多くの電力が得られますし、5%程
度の違いであれば初期投資が安い方がいいと
考える人が多いからです。
これは、ものづくりをしている会社にとっ
て、他人事だとは言えない問題です。
いいものを追求するあまりに、市場で要求さ
れるスペックよりも高レベルな商品を供給し
てしまい、思惑通りには売り上げが伸びない
という事態を引き起こすからです。
これを「一流の罠」というのですが、
お客様は常に一流を求めているわけではあり
ません。現実には、予算の問題が常について
回りますから、そこそこで抑える必要があり
ます。
その見極めが特に難しいのが建売住宅です。
いいものは確かにいい、
しかし、いいものは高い。
いいものを提供しつつ、価格を抑える。
商品はお客様の望む価格で提供できない限
り、どんなにいいものを作っても売れません。
いいものをつくろうという意欲は大切。
しかし、いいものをつくれば売れるというの
は、大きな間違いです。
真面目な経営者ほど陥るのがこの罠。
いいものづくりは、ほどほどに。