どんな商品、どんなビジネスにもライフサイ
クルがあります。つまり、いい時は永遠には
続かないということ。
言葉でいうのは簡単ですが、儲かっているビ
ジネスに見切りをつけるのは至難の技です。
しかし今、この言葉を実感している業界があ
ります。それが、太陽光発電の業界。つい最
近まで一世を風靡た業界ですが、今や倒産ラ
ッシュ。一部上場企業でも瀕死の状態を迎え
ています。
太陽光発電が脚光を浴びたのは、今から5年
ほど前のこと。東日本大震災が発生し、首都
圏では「計画停電」まで起きた頃ですから、
そんなに昔のことではありません。
震災後に東京電力福島第一原発が爆発事故を
起こし、原子炉がメルトダウン(炉心溶
融)。大量の放射性物質を環境中に放出しま
した。
そのため、国民の間では「原発=悪、再生可
能エネルギー=善」「とりあえず火力発電で
停電を回避し、将来は再生可能エネルギー」
で、という意識が広まり、当時、すでに商業
利用が大きく進んでいた太陽光発電と風力発
電は、電源構成の主役を原発から再生可能エ
ネルギーにシフトさせてくれる「期待の星」
とみなされたのです。
正直、当時の太陽光発電業界は、キラキラ輝
いていました。どこもかしこも売上は右肩上
がり。飛び込み営業でバンバン決まるという
状況で、人材さえ確保できればどんどん会社
が大きくなっていった時代です。
しかし、そんな時代も長くは続きませんでし
た。電力の固定買取制度の買取価格の低下が
きっかけとは言われていますが、実際は参入
業者が増えたこと。儲かるからとみんなが一
斉にこの業界に参入してきたことです。
当然、販売する業者の数が増えれば過当競争
がはじまります。限られた牌を奪い合うわけ
ですから値引き競争にも陥ります。そうして
バブルは終焉していくのです。
その結果、2013年に17件だった倒産件数
は、14年は21件、15年は36件と年を追って
増加し、16年は1月から5月までに17件起き
ています。
これは前年1~5月の13件を上回り、年率換算
すれば40件で過去最高を更新しそうな勢い。
負債総額も14年の44億8200万円から15年の
91億2700万円へ、ほぼ倍増しました。
今年は4月に新電力(特定規模電気事業者/
PPS)の一つで、自治体の太陽光発電を多く
調達していた東京の日本ロジテック協同組合
が負債総額162億8244万円で倒産しており、
過去最高を大幅に更新するのは確実です。
もちろん、すべての太陽光発電業者が倒産し
ているわけではありません。ビジネスのライ
フサイクルを理解して、事前に手を打ってい
る業者さんもいます。
太陽光発電でしっかり儲けて、ビジネスが衰
退期を迎える前に新しいビジネスの再投資す
る。そんな仕組みができている会社があるの
も事実です。
大切なことは、ビジネスの予測ができるかど
うか。そして、早め早めに手が打てるかどう
かです。ご注意ください。