キリンビール高知支店に学べ!

 

キリンビールの元副社長・田村潤氏が著した

『キリンビール高知支店の奇跡』が面白い。

 

この本は、あるクライアントの社長さんから

勧められたのですが、ビジネスマンを中心に

読者を広げ、増刷を重ねていると言います。

 

本書の著者である田村潤氏は、元キリンビー

ル株式会社代表取締役副社長。

 

1995年に支店長として高知に赴任した後、

四国4県の地区本部長、東海地区本部長を経

て、2007年に代表取締役副社長兼営業本部長

に就任。全国の営業の指揮を執り2009年には

キリンビールの首位奪回を実現した人物です。

 

本書は、その田村氏が高知支店長として小さ

な営業現場の改革から始めて、そこで得たノ

ウハウをベースに四国4県の本部長として業

績をV字回復。さらに東海地区本部長、そし

て最終的には代表取締役営業本部長として全

社の営業の風土の改革に成功し、キリンビー

ルが再び業界1位の座を奪い返すまでのドキ

ュメンタリーです。

 

物語はアサヒビールにあと一歩で首位を奪わ

れそうなところまで迫られていた1995年、

東京本社の量販の本部担当営業企画部長代理

だった田村氏が、「安売りで売上を伸ばせ」

という上層部の方針に反発したところからは

じまります。

 

ゴールのない価格競争に踏み込むことは会社

の体力消耗につながり、長期的に良いものを

消費者に届けられなくなる。

 

お客様を第一に考える顧客視点の施策として

正しいと思えなかった田村氏は、この上層部

への反発が原因で、全国でも売上げ最下位ラ

ンクの高知支店へ「飛ばされて」しまうのです。

 

そこから改革をはじめるのですが、とにかく

うまくいきません。営業社員たちに危機感が

ないからです。

 

むしろ、自分たちは本社から降ってくる指示

をきちんとこなしている、なのに売れない、

だから自分たちにはどうしようもないという

「あきらめ」ムードが漂っていたと言います。

 

この状態を徐々に改革していくのですが、

特効薬はありませんでした。

 

正直、この本には画期的な改革法なんて書い

てありません。むしろ、商売には裏技はない、

ということを教えてくれる本です。

 

いろんなエピソードがあるのですが、私が好

きなエピソードは、高知限定広告の話。

 

”広告を考える場合、お客様が飲んでいるア

サヒをキリンに変えるにはどうしたらよいか

と考えるわけです。

 

「こっちの水が甘いよ」と誘うわけですが、

これがことごとく失敗する。

 

そこで、途中で考えを変えました。

いくらキリンのほうがよいですと言っても聞

いてくれないので、こうなったらそこはすっ

ぱりあきらめ、今キリンを飲んでいる人たち

だけを大切にする。その方たちにもっと喜ん

でいただくことだけに専念する、と考え方を

変えてみました。

 

そうすると、キリンを飲んでいる人の幸福度

が相対的に高まり、水が高いところから低い

ところに流れるように、自然とアサヒからキ

リンに変わるのではないだろうか。これが正

解でした。”

 

新規を追うのではなく顧客を大事にする。

マーケティングでは王道の考え方なのですが

できている会社は滅多にありません。

 

さしずめ、建売住宅販売なら仲介業者を大事

にするということでしょうか。

 

ビール市場も建売市場も「縮小市場」。

置かれた環境は同じ。ビール業界を建売業界

に置き換えて読んでみると参考になる話ばか

りです。時間のある時に読んでみてはいかが

ですか。おすすめです。