忘れられない経営者。

 

私にとって忘れられない経営者がいます。

それはまだ私が20代だった頃。バブルが弾け

る前、私が海外不動産を販売していた時に出

会った経営者です。

 

当時、私はマイアミのコンドミニアムを販売

していました。海外不動産が注目されていた

時代でしたが、それでもマイアミの海外不動

産を扱う業者は、ほとんどいなかった時代。

それなりに多くのお客様に販売しました。

 

そんな時に出会ったのが冒頭の経営者です。

この経営者は、南青山に大きなビルを持つ二

代目経営者。そんな経営者から資料請求があ

り、資料を届けに伺いました。

 

当時は、日本全国がバブルに浮かれていた

頃。南青山に会社があるだけでステイタスだ

った時代です。

 

そんな時代に南青山に自社ビルを構える二代

目経営者ですから、さぞかしイケイケの経営

者が出てくると思っていたのですが、私の期

待は大きく裏切られました。

 

秘書の女性に案内されて社長室へ向かうと、

出てきたのは40代の品の良さそうな男性でし

た。私より20歳ぐらい年上だったでしょう

か、イケイケ感の全くない経営者だったのを

今でも覚えています。

 

当時、この経営者はすでに多くの海外不動産

を所有していました。オーストラリアを中心

に資産として買っていたようです。

 

いわば、セミプロ。

25歳の若造が相手にするには一番厄介なお客

さんです。正直、ビルに入った瞬間から緊張

していました。完全アウェーの状態です。何

を話していいのかすらわからない、頭が真っ

白な状態でした。

 

そんな状態の若造に向かって彼が話した第一

声は、

 

「西村さん、今日はわざわざありがとうござ

いました。色々とマイアミの不動産について

勉強させてください」

というものだったのです。

 

最初は、社交辞令のようなものだと思ってい

たのですが、彼は終始、私に対して丁寧な言

葉で接してくれました。

 

それまでにも何人も世間的にはお金持ちとい

うお客様に接してきましたが、彼ほど私のよ

うな若造営業マンに丁寧に接してくれた人は

いませんでした。

 

終始、「教えてください」という態度だった

のです。正直、当時の私が持っていた知識や

経験なんて彼の足元にも及ばないものだった

と思います。

 

しかし、この経営者はそんなことはおくびに

も出さず、私に気持ちよく話をさせてくれた

のです。

 

帰る頃には、私自身がすっかりこの経営者の

虜になっていました。最終的にはこの経営者

とは取引はできませんでしたが、彼のために

何度も何度もマイアミの不動産事情をまとめ

て送ったのを覚えています。

 

年をとると、年下の人間より自分の方が偉い

と思ってしまいます。確かに、経験は上かも

しれません。しかし、年下の人間から学べる

ことがないのか、といえばそれは違います。

年下の人間からも学べることは山ほどありま

す。

 

ビジネスをする上で実際の年齢は関係ありま

せん。相手の話から何かを学ぼうという姿勢

があるかないか、これがなくなったらビジネ

スマンとしては老人です。

 

私もすでに54歳。

老人にならないよう心がけたいと思います。