ミスマッチしていませんか?

 

今をときめく人物といえば、やはり

ドナルド・トランプ以外にないでしょう。

 

私が彼を初めて知ったのは今から29年ほど

前、1987年に発表されたトランプの自伝

『THE ART OF THE DEAL』(ちくま文庫

『トランプ自伝』)を読んだ時のこと。

 

彼が不動産取引の天才として脚光を浴び、

大富豪となった頃です。

 

自伝でも記されていますが、彼のやり方は単

純明快。ねらいを高く定め、求めるものを手

に入れるまで、押して押して押しまくる。

 

何かにかりたてられるようにある目的に向か

って進み、時には異常とも思えるほどの執念

を燃やすというやり方。今回の大統領選に通

じるものがあります。

 

そんなドナルド・トランプですが、失敗が多

いのも彼の特徴。90年代に2回、2000年代に

も2回、合計で4度の破産申請をしています。

 

直近では、2008年のリーマン・ショックで大

打撃を受けており、破産宣告による民事再生

を申請。それでいて、不死鳥のように復活す

るのもトランプの真骨頂です。

 

米経済誌フォーブスは昨年9月、2015年版の

長者番付を発表しましたが、それによるとト

ランプ氏の資産総額は45億ドル(約5400億

円、当時)。リーマンショックから数年でこ

こまで息を吹き返したのは、お見事。アメリ

カ国民が彼に期待を寄せるのもわからないで

はありません。

 

そんな彼ですが、小さなミスはしょっちゅ犯

しています。例えば、彼がテレビショッピン

グ専門チャンネルであるQVCに出演した時の

こと。

 

彼はこの番組で、

「Think Like A Billionaire(億万長者

思考)」という自分の本を売っていました。

 

30分で数千冊ほど売れたそうですが、決して

褒められる数字ではありません。なぜならも

っと多く販売することができたからです。

 

そもそもの間違いは、商品の選択。

彼の本は、QVCを見るような人が欲しいと思

う商品だとは考えにくいことです。

 

時間帯にもよるのでしょうが、彼の本を読み

たいと思うビジネスマンがこの番組を見てい

るとは思えません。

 

つまり、商品と見込客の間にミスマッチが生

じているのです。では、その状況で、どうし

たらもっと売れるようになったでしょう?

 

それは、この本を「あなたの周りのビジネス

マンへの最高のプレゼント」として売り出す

べきだったのです。

 

そして、番組内で本の内容を長々と説明する

のではなく、どんな人がこの本に興味があっ

て、この本をもらったら喜んでくれるかに時

間を割くべきだったのです。そうすれば、も

っと売れたでしょう。

 

大切なことは、媒体に合った商品を販売する

こと。媒体に合ったメッセージを発すること

です。

 

売れないのは商品のせいではありません。

売れないのは、商品と媒体、メッセージが

ミスマッチを犯しているから。そこのところ

くれぐれもお間違いなく。